当HPをご覧になられている方へ、一つだけ説明しておきたいことがあります。それは「暫定ルート」の存在です。他のトレイルにはないし、よく分からん。なんであるんだろ、そう思ったことないですか?
はい、耳が痛いです。たしかに分かりづらいところの第一位でしょう。
しかし、ここがこの利府トレイルプロジェクトの肝となる部分ですので、今回あえて一つのテーマとして取り上げたいと思います。
「暫定」な理由
なぜ暫定かというと、それはこの道が完成するために必要なパーツが揃っていないからです。
どういうことかというと、今の暫定ルートというのは、大雑把に言うと、私の創作物に過ぎません。
私が利府のあちこちを歩いて、「ここいいな」と思ったポイントを繋いだものに過ぎないのです。
たしかにそういった道でも道としての体裁は取れますが、一体私以外の誰が、この道に共感するでしょうか。
トレイルとは「歩く旅をする舞台」、つまり「みんなのもの」です。
舞台は関わる人が多ければ多いほど面白くなりますよね。
利府トレイルもまた、そのような舞台を目指さなければなりません。
そこで圧倒的に今の暫定ルートに必要なのは「地域住民の声」です。
私は五年ほど前に利府に引っ越してきた人間で、元からいた人ではありません。
たしかに一般的な人よりも多く利府を歩いてきました。そこに自負を持っています。
でも私には、利府の道の一つひとつが持つ「意味」を理解しきれていません。地域の人がその道にどんな思い出や思い入れを持っているのか分からないのです。つまり、今の状態では片手落ちです。
私はここに時間をかけてでも、住民の声を反映していきたいと思っています。トレイルづくりのキーパーソンは「住民」です。
地域ワークショップ
そこで今後の展開ですが、利府を「東部」「中部」「西部」の地域に分け、それぞれにワークショップを開いていく予定です。
- 魅力地点の洗い出し
- 実際に歩いて課題や魅力を再確認する作業
- 三つの地域のルート案をどう統合するか
- 利府トレイルを持続発展させていくための運営体制の構築
- 何らかの理由で道に変更が生じたときなどに必要な連絡網の整備
- 行政との関係構築
- その他、様々な課題
これを地域住民と一緒になってクリアしていいかなければなりません。
予定としては今年度中にこれらを片付けて、「正規ルート」としてハイキングマップを制作し皆さんにご提供するつもりです。
先進事例に学ぶ
私は今年の6月まで「みちのく潮風トレイル 名取トレイルセンター」に二年ほど勤め、そこでみちのく潮風トレイルが全線開通するまでの経緯を学んできました。
おおよそ上記のようなプロセスを踏んでいます。つまり、
- みちのく潮風トレイルを管轄している環境省の職員が一人で全部歩く
- それをたたき台にして関係自治体で地域ワークショップを開く
- それを基に正規ルートを決定する
- それを基にいわゆる「環境省マップ」を作成する
という行程です。※この環境省マップには「ハイカー」の視点が入っていなかったので、後に更新され今は「ハイキングマップ」となっています。
全長1,000km超、4県28市町村(現在は29)が関わる道の選定にあたっては、想像するだけで苦労が絶えなかっただろうと思います。調べてみると、開催したワークショップは延べ200を超えていました。
それ以前に「トレイル」という言葉が今よりも馴染みのないものであった当時は、関係自治体の反応も芳しくなかったと聞いています。
それにはもちろん震災の影響もありました。みちのく潮風トレイルは環境省の「グリーン復興プロジェクト」の一環ではありますが、具体的な復興を優先しなければいけない自治体にとっては、トレイルを最優先に考える理由がなかったのです。それでも、関係者の地道な努力と情熱があり、徐々に事業が進んでいきました。
2013年青森県八戸市~岩手県久慈市区間を皮切りに、みちのく潮風トレイルは順次開通していき、2019年6月全線開通を果たしました。この息切れするほどの年月と努力に私は心から敬意を示したいと思います。また、このような過程を踏んだからこそ私はみちのく潮風トレイルを大切に思います。
「一人のハイカー」
ある関係者から聞いた話を紹介します。
上記で述べたように、2019年みちのく潮風トレイルは開通しました。
でも、その関係者は不安でしかたなかったそうです。
誰も歩いてくれなかったどうしよう…
トレイルは人に受け入れられるのだろうか…
地域の人への認知もまだまだだし…
でも、そんな状況を変えたのは「一人のハイカー」でした。
「なんだかんだ自治体に説明しても、なかなか本気になってくれなかったのよ。あまり具体的に想像できなかったんだと思う。でも、それを変えたのはハイカーさん。もちろん、ハイカーさんはただ自由勝手に歩いてくれただけなんだけど、そこから歯車が回り出したのよね。口で100篇説明するより、一人のハイカーさんよ。」
僕はこの言葉をすごく印象深く聞きました。
そうか、いくらうちらが本気になっても、ハイカーには敵わないんだな。
ということで、今でこそ全国から人を集めるみちのく潮風トレイルであっても、最初は一人からのスタートでした。
そして、その一人が歩き出す前には、長い長いモラトリアム期間があり、未完成のまま一個の完成体になるまでふらふらと動いていたのです。
今の利府トレイルは、まさにそのような状態。
これをたしかなものにさせていきたいです。
だからこそ暫定ルートも公開しています。
ハイカーさん、このトレイルが未熟なのは知っています。
誰にも知られていない、無名なトレイルだとも知っています。
でも、この静かな湖面に波紋を起こしてください。
それができるのは皆さんしかいません。
注意事項
最後に、暫定ルートを取り扱う上で、何点か注意事項があります。
適宜省略してください
暫定ルートを見ると、行って戻ってくるだけのような道やジグザグ歩く道が何か所かあります。非常にうざったく感じると思います。それは適宜省略してください。私の中に「気持ちよく歩く」というハイカーの視点が欠けていた時期の創作物なので、そうなってしまいました。
最新情報が反映されていません
暫定ルートを作った時期から時間が経過しています。そのため、宅地造成の工事や災害などで道が変化している可能性があります。たとえば、暫定ルートでは「番ヶ森」を飛ばしていますが、それは台風の影響で土砂崩れがあったからです。今では歩けます。本来、そのような変化をすぐに反映できるような体制を整えなければいけませんが、現状できていません。ご迷惑をおかけしますが、ご理解よろしくお願いします。
wayopointを活用してください
暫定ルートとともに、waypointも公開しています。トイレや宿泊施設、見どころスポットなど、ハイカーにとって有益な情報が載っています。ハイキングを計画する上で役立つものですので、ぜひご活用ください。
以上です。皆さん、今後ともよろしくお願いします!