先週19日、「春日・森郷水物語 ~水源から紡ぐ利府の風景~」を開催しました。かつて「水源」と呼ばれた春日の原水地を目指しつつ、両地区の水に関係するスポットを訪ね歩き、人と水との関わりを掘り下げるのが今回のテーマでした。

たとえば、今私たちが飲んでいる水はどこから来ているでしょうか。利府には「水源」と呼ばれるところや惣ノ関ダムがあるので、そこから水が引かれているだろうと思いがちですが、必ずしも正しくありません。むしろ利府の自己水源は20%程度で、残りの80%は七ヶ宿ダムから引いています。遠路はるばる七ヶ宿からやってきた水は、森郷の制水弁室を通り、森郷受水用配水池や赤沼受水用配水地に送られます。その後、各地の配水池へ送られ、各家庭へと届けられているのです。こうした水の流れは普段気にすることはないですし、気にする必要もないかもしれませんが、少しでも興味を持ってみると、途端に町の中が冒険の場所に変わります。何の変哲もない無機質な上水施設が自分にとって意味のあるものに見えてくるのです。

また、蛇口をひねれば水が出てくる現代とは違って、昔の人がどう水を確保するかは常に切迫した課題でした。森郷の水神碑は、一人の村民が数百メートル先の山裾に井戸を掘り、竹管を繋いで村落に水を引いてきたことを称える水神碑です。これは利府の簡易水道の始まりといわれる画期的な出来事でした。今では水の面影など全く感じられない場所になっていますが、昔はここに竹管と繋がった大桶が設置されていたそうです。こうした石碑も、目を向けなければそれまでですが、目を向けて見るとおもしろい歴史に出会えることがよくあります。

このようにして現在の水インフラを考えたり、過去水と向き合った人々のエピソードを紹介しながら、私たちは春日の水源地を目指しました。水源は利府街道を離れた、谷あいの奥まったところにあります。歩いていくうちに、車の騒音も消え、鳥のさえずりや鳥が驚いて飛び立つ音、樹々の揺れる音、せせらぎがちょろちょろ流れる音。「平和ですねー」と参加者と声を交わしながら、目的地に着きました。かつて塩釜が利府に水を求めてきた際、原水として利用したのがここでした。

季節柄、水辺に生き生きと活動を開始している生き物たちも私たちを迎えてくれました。





当日は最高気温が25度まで上がり、暖かいを通り越して暑いぐらいでしたが、ここで暑さをしのぎ、心を満たして帰路に着きました。参加者の皆さん、ありがとうございました。
次回は長根街道です。平安時代の東山道、坂上田村麻呂も通ったであろう道を歩きます。お申し込みはお早めに。