東山道レポート⑫ 仙台燕沢から利府へ - 一般社団法人タンコーカナリ

先月の話になりますが、11月18日、「東山道を歩こう」で仙台の燕沢から利府まで歩いてきました。現在の利府街道と平行して走るいわゆる「塩釜街道（現在は松原街道とも）」を北上（東進？）するルートです。東山道の道筋としては、岩切から松森方面へと向かう道筋とする説もあるようですが、今回は利府に向かって歩いていきます。

新田にある公文式の駐車場をお借りして出発！
公文式は、参加者のIさんが関係していて、今回快く貸してくださいました。ありがとうございます。
まずは、利府街道に出るまで、細い路地を歩いていき、西友燕沢店辺りから塩釜街道へと入って行きます。

比丘尼坂を上っていきます。比丘尼坂は松尾芭蕉が塩釜への道中「塩釜へは、…原町、あんない、びくに坂、今市…」と通ったところです。大きくカーブするところには石標が立っており、その裏には「平将門が滅ぼされた時、その妹が相馬御所をのがれてこの地にたどり着き、比丘尼となって庵を結び、道行く人々に甘酒を造って売ったと伝えられる。この甘酒はのちのちまで伝わり、案内の湯豆腐や今市のおぼろ豆腐、今市足軽が内職として作った今市おこしなどとともに塩竃街道の名物となった」と書いてありました。甘酒、湯豆腐、おぼろ豆腐、今市おこし…、今に伝わらないものばかりですが、そのような時代があったのだなぁとしみじみ。坂はいつのまにかずいぶん上って、さっきまでいた場所がずいぶん下にありました。

しばらく行くと、道は国道４号線と立体交差します。跨道橋となるこの辺り一帯は燕沢遺跡という古代の寺院跡があった場所と考えられています。燕沢遺跡についてもっと知りたかったので、説明版がないか付近をぐるぐる回ってみましたが、見つけることはできませんでした。４号線を越えると、近くに追分道標がありました。

ここから岩切まではずっと真っすぐな道が続いていきます。私にとっては初めて通る道だったので、知らないものばかり。街道沿いに、おしゃれなお菓子屋さんやパン屋さんがあるのは、なぜかうれしく思いました。耕田寺というお寺には、江戸時代の板碑（中世板碑ではない）や出羽三山碑などの石碑が多数ありました。

道は市川橋を渡り、東光寺前に出ます。橋の袂には「塩釜街道・今市」の石標が立っていました。側面の一つには「岩切若宮で石巻街道と分かれる街道である。多賀城市南宮と市川の間で砂押川を渡り、多賀城政庁跡の北を通り、塩釜市大日向・赤坂を経て塩釜神社に至る。赤坂橋を渡ると元禄頃の遺構とされる越後屋があり、塩釜詣の客に土産品を売っていた。母屋は藩公の休息所とされたが、腐朽が甚だしく昭和５２年に解体された」、もう一つには「昔は冠屋とよばれた。歌名所の轟の橋（緒絶の橋）があり、近くには奥の細道も通っている。留守家旧臣の兵藤大隈が岩切村端郷の原野を切り開き、町場を建設した所で、寛永二年（1625）には町場住民が一括して弓組足軽に取り立てられ、兵藤氏が代々組頭を勤めた。この今市足軽と福田・諏訪の足軽を三町足軽ともよんだ」と書いてありました。近くには青麻神社に通じる青麻道の石標も立っています。八坂神社を参拝し、化粧坂を越えて利府に向かいました。（今回は時間の関係で東光寺には立ち寄りませんでしたが、中世板碑や摩崖仏など、この地域の中世史を学ぶのにとてもいい場所なので、ぜひお立ち寄りください！）

化粧坂は今では想像がつきませんが、かつては府中の中心域とその外縁を区切る峠道だったと考えられています。この峠には留守家初代・伊沢家景が羽黒山から勧請したといわれている羽黒神社、のちにその神域を山城にした化粧坂城がありました。観応の擾乱・岩切城の戦いがあった直後は、国府奪取のために有力氏族や南朝勢力が多賀城を目指しましたが、この化粧坂城が一つの砦になったのではと私は考えています。のちに留守政景が取り立てたのも、やはり地理的な重要性があったからではないでしょうか。ここは現在においても、岩切と利府の境界になっています。

町境を越え、利府に入った後は、菅谷・沢乙を抜け、町の中心に入って、今回の旅を終えました。菅谷には穴薬師や横穴墓群、不動尊といった奈良・平安時代の文化遺産が多数残っていますが、みなさん何度も訪れているので今回はカット。かわりに、沢乙の熊野神社に立ち寄り、裏の山道を抜けて、利府高校のグラウンド前に出、そして中心部へというルートを取りました。この熊野神社は深山館という中世の山城・物見があった場所で、急な山道が参道となっています。