19日、「追憶の山線と人々 ~利府駅から赤沼へ~」を開催しました。
利府駅をスタートし、SL公園、レンガ造りの橋脚、築堤カーブと隧道、切通しなどの遺構を通って、赤沼の染殿神社で解散する約7kmのコースです。案内は利府町機関車保存会の鈴木隆悦さんにしていただきました。
午前9時半。利府駅を出発し、廃線路に沿って歩き出しました。廃線路跡はほとんど公道として歩けますが、一部民間に買われたところもあります。仙建工業さんのところには、「工」と書かれた石標があり、皆さん興味津々です。
通称SL公園と呼ばれる森郷児童遊園では、鈴木さんが機関車保存に携わったときの活動を教えていただきました。残念ながら公園に設置されていた機関車は解体されてしまいましたが、利害関係者のギリギリの一致点として、動輪がモニュメントとして残りました。関係者の方々の尽力で、今私たちはこうして山線について考え、思い起こすことができています。
公園を過ぎると、真っすぐな道が1km弱続きます。ここは山線が丘陵地に向けて加速する場所でした。手前の橋はなこそ川に架かる橋で、明治時代に作られたイギリス式のレンガ積みの橋脚部を今でも確認できます。
この真っすぐな線路沿いには、地元の氏神様が祭られている熊野宮があります。ここは、1945年多賀城が爆撃を受けたとき、上野行きのSLを隠したところでした。お宮があるここは切通しであり、ほかよりもこんもりとした場所で、上空からSLを隠すのによかったのです。当時、ずっと待機している乗客を不憫に思った藤田や春日の住民は、家のじゃがいもをふかして乗客に配給したそうです。SLと人々の関係を示す貴重なエピソードだと思いました。
棒掛けの風景が美しい田んぼの脇から利府中ICを通り抜けると、春日という地域に出ます。ここには立派な築堤が残っています。この築堤が大きくカーブすることから、鈴木さんは築堤カーブなどと呼んでいました。鉄道好きの人はこのようなカーブが好きなようで、前の車両から後ろの車両を眺めることが出来たり、写真を撮る際に車両全体を収めることができるので気分が上がるのだそうです。築堤を横切るための歩行者用隧道は、明治の重厚感を残し今に健在です。
春日PAで長めの休憩を挟み、しばらく歩いた後、切通しに出ました。側面に石垣が積まれています。苔むす感じもいいものです。
そうこうして、ゴールの染殿神社に着きました。予定より20分ほど早く着いてしまったため、郷土史会の宮下周子さんによる即席の染殿神社講座を開いてもらいました。最後に、鈴木さんから生姜の差し入れもありました。皆さんのふっとこぼれる笑顔が、なにより嬉しかったです。
今回のイベントでは、鉄道にとても詳しい方も参加され、それぞれのスポットで補足的にたくさんのことを教えていただきました。とてもやさしく、あたたかく、このイベントを一緒に盛り上げてくださったように思います。また、「次回も楽しみにしているよ」「企画できたらメールで案内してね」など、続編を期待する声をたくさんいただきました。本当にうれしかったです。
最後に、日ごろお世話になっている方々のサポートや、今回スタッフとして参加してくださった鈴木さん、宮下さん、地域おこし協力隊の平泉紫野さん(撮影担当)の協力なくして今回のイベントは成り立ちませんでした。あらためて感謝申し上げます。ありがとうございました。